「ガリガリ君 25年ぶりに10円値上げを発表!」
こんな記事が、ニューヨークタイムズの一面を飾ったのは2016年のこと。
日米のインフレーションに対する感覚の違いを物語ったニュースとして話題になりました。
このインフレと切っても切れない関係にあるのが「昇給率」。
年末に向け人事考課を実施する企業様も多いこの時期、気になるテーマではないでしょうか。
今回は日米の昇給文化の比較と、2024年の最新動向をご紹介していきたいと思います。
昇給とは読んで字の如く「給与の上昇」=「Salary Increase, Pay Raise」を指します。
ただ「昇給」という言葉を聞くと、日本の方の多くが「勤続年数に伴い役職や給与があがる昇進や昇格」をイメージする方が多いよう。
しかし米国では以下のような多岐に渡る要素が昇給の背景にあることを、まずはお知りおきいただければと思います。
内的要因 | 外的要因 |
---|---|
能力・スキルの向上 | 企業の経営状態 |
パフォーマンス | 労働市場の需要と供給のバランス |
担当業務の拡大 | インフレーション(物価上昇)・CPI(消費者物価指数) |
一個人だけが判断軸なのではなく、社会情勢や経済状況も反映するのが昇給の本来の姿であるということ。
極端な言い方をすると、業務内容が何ら変わっていなくても、パフォーマンスが期待値を超えていなくても、昇給が起こりうるのがアメリカな訳です。
それでは、日米で昇給へのイメージが異なる所以は何でしょうか?
理由は複数あるかと思いますが、よく話題に挙がるものを以下にてご紹介したく思います。
過去の記事 [転職社会アメリカ]でもご紹介した通り、日本とアメリカには以下の通り雇用慣習の差が存在します。
まだまだ勤続年数が物を言う社会だと言える日本。「パフォーマンスに応じた昇給概念」も近年では浸透し始めているようですが、昇給=昇格・昇進というイメージが未だ根強いように感じます。
冒頭でご紹介した通り、2016年5月日本のあの人気商品がニューヨーク・タイムズの一面を飾ったことをご存知でしょうか。
赤城乳業社が定番アイス「ガリガリ君」を25年ぶりに60円から70円に10円値上げしたニュースを、米有力紙ニューヨーク・タイムズは、一面にて掲載。
幹部と100人近くの社員が並んで深々と謝罪するお詫びCMにも触れ、「景気低迷で物価が長年伸び悩む日本では、どんな値上げも重大ニュースだ」と驚きを伝えると共に、デフレの象徴として皮肉を込めて報じた。
[進む物価狂乱]の記事でもご紹介した通り「先週と今週で△ドルも卵の値段が違う」「賃貸の更新のタイミングで何百ドルも家賃が上がった」という場面は、アメリカでは日常茶飯事。
参考までに、以下は過去10年の日米インフレーション率の推移です。
日本はマイナス成長の年もあるなど、その差は歴然。アメリカ在住者にとって物価上昇がいかに身近か、そして物価が上がる=給与もあがって当然という考え方をなぜ持っているのか、をお分かりいただけるのではないでしょうか。
それでは最後に、アメリカでどの程度昇給が実施されているかを見ていきたいと思います。
過去10年の米国の昇給率は、平均で3%前後を推移しています。
大手ファイナンスカンパニーWTW(ウィトニグループ)の調査によると、本年2024年の予測値は4%。Salary.com・SHRM・Payscaleなどの人材会社も、これに類似した調査結果を出しています。
2023年の4.4%という実績値からは程かしたものの、依然として高い水準での上昇となる見込みです。
皆様の昇給率も気になるところです。以下の式でぜひ計算してみてはいかがでしょうか?