アメリカの共働きと保育のリアル
〜保育費の危機的家計圧迫〜


カリフォルニア州の保育園代の平均月謝は約$1,400(≒ 約20万円)。
これは、時給$20のお仕事で、パートタイムで週3回 丸一日働いた場合に得る収入とほぼ同等です。
高い、高すぎる・・・・・


昨今では、下記のような見出しの記事もネット上に溢れかえっています。

“Child Care Officially Costs More Than College & Your Mortgage in 30 States.
全米30州で、大学の学費と住宅ローンより保育代が高額に”



「家計を助ける為に働いても、保育園に預ける金額と変わらないのなら、働く意味はあるのだろうか?」
「金額のことはさておき、社会復帰やキャリア形成を優先すべきだろうか?」
このように頭を悩ますママ・パパの皆さんからのお声をよく耳にします。

今回は米国の ”保育” にスポットを当て、日本の制度との比較も交えながら解説していきたいと思います。

1. アメリカの共働き事情

まず端的に、残念ながら、アメリカの保育制度は決して素晴らしいものだとは言えないと感じます。
実は、遅れている?!産休・育休後進国 アメリカ」でもご紹介した通り、米国は福祉面で大きく遅れをとっているのが事実です。

以下、日米のワーキングママに関するデータの比較をご覧ください。

近年日本でも、女性の社会進出に伴い共働き家庭は増加傾向にありますが、注目いただきたいのは「フルタイムでの就業率」の違い。

アメリカのワーキングママの80%以上がフルタイムで働いているのに対し、日本は20%前後にとどまっている状況です。


※参照:
米国労働局 | EMPLOYMENT CHARACTERISTICS OF FAMILIES
厚生労働省 | 国民生活基礎調査

理由は様々あるかとは思いますが、そのひとつに、冒頭に述べたような保育費と収入のバランスの問題があるのではないかと感じます。

また、アメリカでは基本的に「子供をひとりにしてはいけない」とされており、未成年は常時保護者の監督が必要です。故に、親族や友人に頼む場合を除き、自身が一緒にいられない時間は施設やベビーシッターに預けることが求められます。パートタイムで得られる収入ではそれを賄いきれないというご家庭も多いのかもしれませんね。

2. 日米の保育事情比較 〜費用編〜

日本

文部科学省の子供の学習費調査によると、平均年間保育総額は以下の通り。

  • 公立幼稚園:約17万円
  • 私立幼稚園:約31万円

なんと・・・アメリカの月額に匹敵する値ですね。
2019年10月に制定された「幼児教育・保育の無償化制度」に基づき、学費は全て無料。各家庭の負担は給食や校外活動費のみである為、上記の金額での修学が可能となっています。

  • 0歳〜2歳まで:低所得世帯者は無償利用可
  • 3歳〜5歳まで:幼稚園、保育所、認定こども園など、全ての子供が無償利用可
  • 子どもが2人以上の場合:第二子は半額、第三子以降は無償

アメリカ

以下は全米各州の平均年間保育費です。
最安値であるサウスダコタ州でさえも円換算にすると100万円弱。最高額は、マサチューセッツ州で300万円超え、と日本とは比較にならないほど高額であることが見てとれます。

なぜアメリカの保育費は、これほどまでに高いのでしょう?
理由はひとつではないでしょうが、行政のサポートがないこと私立幼稚園が基本であることが主たる理由として挙げられると言われています。詳しくは後段にて説明します。

3. 日米の保育事情比較 〜仕組み編〜

アメリカの教育システムは、日本のそれと大きく異なります。

        
種類 日本アメリカ
教育行政 国が教育の方針や指導内容を決める中央集権的な制度の下、全国一律の教育を実施地域住民が選挙で選んだ教育委員を中心に構成され学校区の理事会(School Board)が決定権を持つ地方自治重視な制度の下、地域や学校区ごとの教育を実施
教育制度 以下で全国統一
●義務教育:6歳〜15歳の計9年間
●学年:6-3-3制    
居住地域による
●義務教育:6歳〜18歳の計12年間が一般的
●学年:5-3-4制 / 6-2-4制 / 6-3-3制
就学前教育の選択肢 ●保育園(0~5歳):就労、介護などにより家庭で保育ができない家庭が対象
●幼稚園(3~5歳):利用制限なし    
●Daycare(0~5歳):保育がメインの施設
●Preschool/Pre-K(3~5歳):義務教育が始まる前段階の教育を行う施設
●Kindergarten(5歳):”幼稚園”と訳されがちだが、義務教育1年目であり学費は無料

上記の通り、米国の教育は連邦が司っているのではなく、各自治体に一任されています。故に国からの資金提供も決して手厚いものではく、その額は実際の運営費のたった8%というデータも存在します。
中でも幼児教育に対して政府は非積極的な姿勢であり、国の補助のなさ故に幼稚園は基本的に全て私立運営であり、費用が高騰化している現状があります。

先進国の中で、未就学児の就園率が下位に位置するアメリカ。世帯収入から来る教育格差は、米国が直面している大きな課題であり、多方面から憂慮が示されています。

バイデン大統領は、3・4歳の幼児教育無償化や保育制度の拡充を打ち出しており、今後の変化に期待したいところです。

※参照:
一般社団法人 | アメリカの就学前教育が直面する課題


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