「優秀な人材を見つけましたが、毎回採用につながりません。どうしたらいいですか?」
そんなご相談を、人事の皆様から多く受けます。
未曾有の売り手市場が続く今日のアメリカのジョブマーケット下で、競争力を持つことは決して簡単でありません。会社やポジションそのものの魅力はもちろん、給与、福利厚生、勤務の柔軟性・・・考慮すべき要素を挙げたら切りがないでしょう。
しかし、比較的容易に調整できるファクターがひとつあるように思います。それは「選考活動のスピード(TTH │ Time To Hire)」です。日々めまぐるしく動く人材市場において、選考の速さは内定承諾率を大きく左右します。
今回は、選考のスピードについて、日本とアメリカを比較しながら解説していきます。
参考までに、まずは実際にあった事例をご紹介したいと思います。
選考の初期段階では、企業・候補者ともに第一志望同士で、採用が良い方向で進む兆しでした。しかし、意思決定に時間が要してしまったが故に、候補者が他社への応募を開始。最終的に併願先に流れてしまうという結果となってしまいました。
「スピード感を持った採用」がいかに重要かお分かりいただけるいい例なのではないでしょうか。
本ケースは、初めての現地採用を試みた企業の例ですので、既にアメリカでの採用体制が整っている企業と比較するとプラスαで時間を要していると言えるかもしれません。しかし、類似したケースは頻繁に発生しています。
次は、数値化された調査結果を見てみましょう。大手求人サイトGlassdoorが行った「採用選考に要する日数の平均値」の調査結果は以下の通りです。
ブラジルの39.6日を最大値、インドの16.1日を最小値とし、対象25カ国の採用プロセスにかかる平均日数が知れるのは大変興味深いですね。
注目したいのは、日本とアメリカの差です。1週間以上の差があること、1ヶ月(30日)にまたがった選考であるかないか、は大きな違いと言えるのではないでしょうか。
現に上記のケーススタディーにおいても、まさに1ヶ月ほどを堺に、候補者の心境・志望度合いに変化が生まれたことが見て取れます。
Glassdoor社はこの調査を以下のように考察しています。
日米を比較すると、一般的に言って、日本の方が採用の障壁は高いと言って間違いはないでしょう。また「稟議文化」の存在する日本のビジネスにおいては、意思決定に時間を要しがちなのは皆様御存知の通り。その中で、スピード感のある選考が決して容易でないことは重々理解いたします。
しかし、郷に入れば郷に従え。アメリカにおいて人材採用を成功させるには、日本での採用以上に迅速さ、円滑さを意識した採用フローが鍵となることは常に念頭に置いておきたいものです。
また大手人材会社ロバート・ハーフ社も以下の調査結果を発表しています。
ただ、スピードばかりに気を取られ、採用の質を落としてしまっては元も子もありません。採用に失敗した場合、その代償は最大で該当従業員の年俸の30%に及ぶと米国労働省は発表しています。
効率よく、的確な候補者を採用するにはどのしたらいいでしょうか?
改めて、プロセスの全体図を見てみましょう。
時間の無駄となっていると思われる部分はありませんか?グループ面接化し、面接官を同席させることで面接回数を減らせはしませんか?また、複数回に渡ってアプリケーションフォームの提出などを求めたりはいていませんか?
不要なステップを排除し、可能な限り簡素化したフローを心がけましょう。
言うまでもなく、採用は人事担当者の業務です。ただ人事部に任せっきりになるべきではありません。
どんな人材であればチームにフィットするのか?ジョブディスクリプション上では文面化できないような、理想の人物像は?
こういった現場の声を汲み取りながら、二人三脚で採用を行うことが好ましいですね。
採用管理システム(ATS │ Applicant Tracking System)を導入していますか?ATSとは言葉の通り、応募者の受付から採用に至るまでの業務を一元管理できる機能を備えたシステムです。
米国ではFortune 500の企業の98%、大手企業の66%、そして小規模企業も35%が使用と、近年はATSを導入する企業が増えているという調査結果も存在します。
容易な情報更新、社内共有、業務の一部自動化、人事のミスの未然防止が期待出来る他、採用データを蓄積・分析することで採用業務の効率化を図ることも期待できます。
企業ウェブサイトにおいて、自社がどんな理念を掲げどういった事業を行っているのかを詳しく説明することは、応募者の事前理解を深め、選考における時間節約に繋がると言えるでしょう。
またこれは、近年注目を浴びているEmployer Branding(エンプロイヤーブランディング │ 社員や候補者から見た雇用主としての魅力を向上させていく活動)の観点でも効果的でしょう。61%の求職者が、企業のウェブサイトを見た上で応募の如何を判断するという調査結果も出ています。