「人事考課または人事評価とは、従業員の業務の遂行度、業績、能力を評価し、賃金や昇進等の人事施策に反映させる仕組みのこと。」
言葉で言うのは簡単ですが、経営層やHRの方々の多くが悩みを抱えている分野かと思います。特に昨今の超・売り手労働市場において、タレントマネジメントは決して避けては通れない道ですよね。
近年のアメリカでは、 新しい人事考課制度として”No Rating(ノーレーティング)”が話題になっています。アメリカの人事考課の変遷とトレンドを今回はご紹介致します。
まずは日本と比較しながら、アメリカの評価制度を見てみましょう。
ご存知の通り、この国は絶対的な成果主義国。「転職大国アメリカ」の記事内でご紹介した通りのジョブ型雇用を背景とし、経過よりも結果を見る風潮が強いと言えます。
また「世界一の人材ミスマッチ国日本とその理由」の記事では、”人事=経営に直結するファクター”という概念が存在することもお伝えしました。
こういった背景から、、米国では日本以上に、人事評価に対する強い意識が根付いていると言えるのではないでしょうか。
上記のような背景から、結果を数値化し相対的に評価をするスタイルが米国では主流です。ウォールストリート・ジャーナル紙の調査によると、2012年時点ではFortune 500社のおよそ60%が、数字を根拠とし社員を評価するシステムを採用しているという結果が出ています。
相対評価の一例として、”Rank and Yank Policy”というユニークな制度も存在します。
解雇文化にあまり馴染みのない日本の方にとっては、少し思い切った手法に聞こえますよね。しかしGE社の業績の好調さ故に、アメリカでは数多くの大手企業がこの制度を取り入れたと言われています。
しかしここ数年、このような従来の相対的評価システムに新しい動きが見られ始めました。GE社も実に30年以上続いた上記の制度を2016年に撤廃しています。
その背景には、以下のような問題点に目が向けられるようになったことがあります。
上記のような問題点を解決してくれるものとして、冒頭でご紹介したNo Rating(ノーレーティング)制度が近年話題を集め始めました。
社員の業績を「S、A、B、C」などランクづけをする相対的なレーティングを撤廃したもので、2015年の時点ではFortune 500の約10%がこの制度を導入したという調査結果も出ています。
以下では、ノーレーティング制度下で取り入れられている様々な手法をご紹介します。
その名の通り、自分自身を取り巻く様々な立場の関係者から多角的な評価を受けるもので、多面評価とも呼ばれます。
上司⇔部下の関係性への依存や見方の偏りを防ぎ、公平性・客観性を保つことを可能にしてくれるます。
数字ではなく、従業員の行動特性を基準として評価をする制度です。ある業務や職種において特に高い成果をあげている社員の特性をロールモデル化しそれを評価基準とすることで、評価基準の曖昧さを回避することができます。
目標達成に向けてどういう行動をすれば良いのかが明確になるので、人材育成の面でも有用なものと言えます。
直訳すれば「目標と主な結果」という意味。目標(Objective)を決め、それに付随する求めるべき結果(Key Results)を段階的に考えるというもの。結果だけでなく、経過にも目を向ける評価制度だと想像頂くといいかもしれません。
GoogleやLinkedIn、Facebookなど大手IT企業を中心に導入例が報告されています。
評価や査定ではなく、仕事の悩みやアドバイス交換を目的とし、上司と部下が1対1で定期的に行うミーティングのことです。かしこまった雰囲気ではなく、お互いに自然体で話すことを基本とし、リアルタイムなフィードバックの共有や目標設定のサポートを行います。
1on1ミーティングを実施している国内企業としては、Yahoo! JAPANが有名です。同社は、トップから新人まで約7000人が、隔週で1回以上、約30分の1on1ミーティングを実施しているそう。