“Leaving America”時代に
アメリカで働く私たちが考えるべきこと


“The New American Dream is To Leave America.”

国民すべてに均等な機会が与えられ、勤勉と努力によって自らの成功をつかめる国、アメリカ。
誰もがそう信じたアメリカンドリームが、今や夢物語になりつつあるのかもしれません。

近年SNSやメディアで話題となっている「Leaving America(アメリカを離れる)」ムーブメント。

今アメリカでは何が起きているのか。
そしてその中でも当然ながら存在する”この国に残る人”には何が求められているのか?

キャリアの観点とも関連付けながら、紐解いていきましょう。

1. 「Leaving America」現象とは

近頃、ソーシャルメディア上ではNew American Dream is Leaving America(新しいアメリカンドリームは“出ていくこと”)という投稿が注目を集めています。

@beyondthestates

The new American dream is to leave and move to Europe, where you can experience a higher quality of life and discover new opportunities that are easily accessible to all 🫶 If you’re ready to experience the new American dream, one of the most rewarding and affordable ways to do so is to consider getting a Bachelor’s or Master’s degree abroad (and don’t worry, it’s easier than it sounds!) 🎓 Comment GUIDE if you’re interested in receiving more information on how you can begin the process of finding a program and moving abroad ✈️🌍 #moveabroad #americandream #europe #livingabroad #lifeineurope #expat #studyabroad

♬ original sound – Beyond the States
動画の内容の翻訳:
「新しいアメリカンドリーム」は“出ていくこと”だと思う。

荷物をまとめて、ヨーロッパの静かな町やアジアの海辺の村へ向かうこと。
そこでは、私たちが食べ物で毒されることもなく、
生き延びるために2〜3の仕事を掛け持ちする必要もなく、
医療が“贅沢品”ではなく“当たり前”として存在している。

人々が立ち止まり、小さな幸せを大切にし、ゆったりとした暮らしを楽しむ場所。
地域社会が支え合い、助け合う安全な場所。

私たちは「人生とは、自分の生まれた場所や環境を耐え抜くものだ」と信じ込まされてきた。
けれど、本当は違う。
生まれた場所に一生留まり、苦しみ続けなければならないなんて、人生の“義務”ではないのだ。

こうしたメッセージに共感する人が増えており、「アメリカを離れる」という考え方が一過性のトレンドではなく、社会への構造的不安の表れとして広がりつつあります。


複数の調査も、この動きを裏付けています。以下にていくつか紹介しましょう。

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① 2025年第1四半期に国外移住を選んだアメリカ市民の数が
前年比で 102% 増加。
② 調査対象の米国在外市民のうち 49% が 市民権放棄を検討していると回答。
これは、前年の30%から大幅に増加。
③ 2025年6月時点で、在米移民は前年度比較で 100万人 以上減少。
1960年代以来初。

①参照: マイアミ・ヘラルド新聞 | How many Americans are moving abroad?

②参照: Greenback Expat Tax Services | Why More US Expats Are Eyeing the Exit

③参照: Pew Research Center | What the data says about immigrants in the U.S.

2. 「Leaving America」現象が示す課題

では、このムーブメントの裏側にある人々が抱える「不安」は一体何なのでしょうか?

生活コストと経済的プレッシャーの増大

近年の米国では、住宅・医療・教育のいずれもが歴史的な高騰を続けています。

  • 都市部の平均家賃は月3,000ドル超(New York, San Franciscoなどでは4,000ドル台も)
  • 家族加入の医療保険は年間23,968ドル(Kaiser Family Foundation, 2024)
  • 保育費・大学授業料の上昇も加わり、共働きでも生活が安定しにくい構造に

「努力しても生活が成り立たない」「中間層でも将来が不安」
── そんな声が、“Leaving America”の根底にある現実です。

政策・社会制度への不信感

Pew Research Center(2025年)の調査では、アメリカ人の56%が「自国の将来に悲観的」と回答しました。背景には、以下のような社会制度上の課題があります。

  • 医療制度・学費負担の不平等
  • 移民政策や関税政策の迷走
  • 政治的分断の深刻化
  • 銃犯罪や治安不安

3. アメリカで働くことのこれから

“Leaving America”という言葉が注目され、アメリカ社会の課題が語られる一方で、「それでもこの国でキャリアを築き続けたい」と考える人がいるのも事実。

リクルーターとして感じるのは、不安を抱えながらも「ここで頑張りたい」という前向きな声が少なくないということ。だからこそ、私たちはこの現実を冷静に見つめ、今後の“アメリカで働く戦略”を再定義するタイミングに来ているのだと思います。

不確実性を前提にしたキャリア設計を

AI、自動化、採用縮小、移民制度の変化──どれも個人の努力だけではコントロールできない要素です。だからこそ大切なのは、「変化に備えながら、自分の軸を持つこと」

  • 専門スキルを磨き続ける
  • AIやデジタル領域への理解を深める
  • ネットワークを広げ、複数のキャリアパスを視野に入れる

アメリカを去る、残るに関係なく、どんな状況でも通用する自分を育てる視点が、いま最も価値を持つよう感じます。

キャリアの選択肢を常に開いておく

“Leaving America”という言葉が象徴しているのは、「働く場所の自由」です。
つまり、「どこ」ではなく、「どのように」が問われる時代ということ。だからこそ給与水準だけでなく、

  • ワークライフバランス
  • 家族や健康を守る制度
  • マネジメントの透明性
  • 社会的意義への共感

といった環境の質を見極めることが、長期的なキャリア安定につながるように感じます。

アメリカに残る人、別の国を目指す人、どちらにとっても共通するのは、「自分の市場価値を理解し、次の一歩を戦略的に選ぶ力」のはず。未来は「残るか出るか」ではなく、“どう生きるか”を自分で選ぶ力にかかっているのではないでしょうか?

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私たちSTS Careerは、“アメリカで働くこと”を現実的かつ前向きに支援するパートナーでありたいと考えています。求人紹介にとどまらず、生活コストの分析、キャリア戦略設計、スキル転換支援など、気兼ねなくご相談いただけると嬉しいです♪

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