
「いざ採用してみると、思っていたほど仕事ができない・・・」
履歴書は完璧。面接での受け答えもスムーズ。経験もスキルも、まさに求めていた人材だったのに。
そんな採用のミスマッチを表す新しい言葉が、アメリカで注目されています。
その名も、「Skillfishing(スキルフィッシング)」。
生成AIの普及によって、誰もが完成度の高い履歴書や面接回答を準備できるようになった今、企業は応募者の本当の能力をどのように見極めればよいのでしょうか。
今回は、この新しいキーワードを入口に、AI時代の米国採用市場で起きている変化について考えてみましょう。

Skillfishingとは、オンライン上で別人を装う「Catfishing(キャットフィッシング)」から派生した表現で、応募者が履歴書や面接で自分の能力を実際以上に高く見せることを指す言葉です。
応募者が自分のスキルや経験を実際以上にアピールすること自体は、以前からあった話。
しかし、生成AIの普及によって、こうした問題がさらに広がるそ可能性が指摘されています。
例えば、AIに求人票を読み込ませれば、以下のようなことが簡単にできるようになりました。
もちろん、AIを使って自分の経験を分かりやすく伝えること自体に問題はありません。
一方で、実際には経験していない業務まで実績として記載したり、十分に理解していない専門知識を持っているかのようにアピールしたりすることも、以前より容易になりました。
つまり、実際の能力と、履歴書や面接で伝わる印象との間にギャップが生まれやすくなっているのです。
実際、米国人材マネジメント協会(SHRM)が2026年に紹介した調査では、以下のような結果が報告されています。

参照: SHRM | Skillfishing Undermines Hiring. What Can HR Do About It?
ただし、こうした数字は、AIが直接Skillfishingを引き起こした割合を示すものではなく、あくまで採用現場で感じられている課題や懸念を示すものです。
それでも、AIによって応募書類の完成度が高まる今、履歴書に書かれたスキルをどのように確認するかが、採用担当者にとって重要な課題になりそうです。

AIの活用が進んでいるのは、応募する側だけではありません。企業側でも、候補者の検索やマッチング、応募書類の分析など、採用プロセスのさまざまな場面でAIの導入が進んでいます。
こうした採用環境の変化を象徴するニュースのひとつが、2026年9月に発表されたLinkedInの次世代AI採用支援ツール「Hiring Assistant 2」です。
従来よりも幅広い情報を活用し、候補者の評価や選考業務を支援する機能が強化されました。
LinkedInによると、同社のAI採用支援ソリューションを利用する企業は、すでに20,000社を超えているといいます。
求職者はAIを使って求人に合った履歴書を作成し、企業はAIを使って条件に合う候補者を探す。
まさに、「AIが書いた履歴書を、AIが選ぶ」とも言える時代が訪れつつあるのです。
一見すると、双方にとって効率的な仕組みに思えます。しかし、AIが候補者を効率よく見つけられることと、その人の実際の能力を正しく評価できることは、必ずしも同じではありません。
採用プロセスが便利になるからこそ、候補者の本当の能力を見極めることの重要性は、むしろ高まっているのかもしれません。

では、AIの活用が進む採用市場で、企業はどのように候補者の本当のスキルを見極めればよいのでしょうか。
これまでの採用では、履歴書に記載された経験や実績、面接での受け答えなどが、候補者を評価する重要な判断材料となってきました。
しかし、AIによって応募書類や面接回答を洗練させることが容易になった今、「上手にアピールできること」と「実際に仕事ができること」を、これまで以上に意識して区別する必要があります。
そのためには、候補者の自己申告だけに頼らず、実際の経験や能力を複数の方法で確認することが重要です。
例えば、以下のような取り組みが考えられます。

ここで大切なのは、AIを使っている候補者を見抜くことではなく、AIによって整えられた表現の先にある、本人の実際の能力を確認することです。
AI時代の採用では、候補者の能力を見極める方法だけでなく、何を「必要なスキル」として評価するのかも見直す必要があります。
例えば、資料作成や情報整理など、AIによって効率化できる業務が増える一方で、以下のような能力は引き続き重要な評価ポイントとなります。
採用担当者には、候補者が「何を知っているか」だけでなく、「その知識をどう活用し、どのような成果につなげられるか」まで見極める視点が求められるのではないでしょうか。
AIは、応募書類の作成から候補者の検索まで、採用プロセスを大きく変えつつあります。
だからこそ企業側も、従来の選考方法や採用基準をそのまま続けるのではなく、AI時代に合った人材の評価・採用のあり方へとアップデートしていくことが大切でしょう。
