
「Job Offerが出ました。でもやっぱり、転職はしません。」
そんな人が、今アメリカで増えています。
調査会社 Gartnerが2026年6月に発表した調査によると、直近のジョブオファーを受諾した候補者は48%。2023年末の85%、2024年末の54%から低下を続けています。
転職にまったく興味がないわけではない。それでも、実際には動かない。
Gartnerは、こうした人材が動きにくい状況について“Frozen Talent(人材の流動性の凍結)”という表現を用いています。
人が辞めないのであれば、企業にとっては良いことのようにも思えます。しかし、本当にそうなのでしょうか?
今回は、2026年のアメリカで注目される”Frozen Talent”と、その背景で起きている採用市場の変化についてご紹介します。

“Frozen Talent”とは、経済や雇用市場への不安などから転職に慎重になり、人材が市場で動きにくくなっている状態を表す言葉です。
背景には、ここ数年で大きく変化したアメリカの雇用市場があります。
Gartnerは、こうした人材が転職市場で動きにくい状況を“Frozen Talent”と表現しています。また企業・人材双方の動きが鈍るジョブマーケットは、“The Great Freeze(労働市場の大凍結)”とも表現されています。
こうした動きは、以前の記事でご紹介した「Job Hugging(ジョブ・ハギング)」とも重なります。Job Huggingでは、雇用市場への不安から「今の仕事を手放さない」働く人の行動に注目しました。
そして2026年、その「人が動かない」状態が、採用市場にもより鮮明に表れています。

参照: Gartner | Gartner HR Research Finds 48% of Candidates Accepted Job Offers in 4Q25
もうひとつ注目したいのが、高いスキルを持つ人材ほど現職に留まる傾向が強いという点。高スキル人材は、その他の人材と比べて現職に留まる可能性が39%高いという結果が出ているのです。
これは企業側からすると、「採用したい優秀な人材ほど、転職市場で動かない」という難しい状況でもあります。
では、人材が動きにくい市場で、企業にはどのような採用戦略が求められるのでしょうか?

経験豊富な人材や専門性の高い人材ほど現在の会社に留まれば、求人を出しても、企業が本当に採用したい候補者が転職市場に現れにくくなります。
さらに、候補者が慎重になっている市場では、単によい給与を提示すれば転職を決断してもらえるとは限りません。
新しい会社へ移ることには、こういった不安も伴います。
だからこそ企業には、「なぜ今の会社を離れてまで、自社へ来る価値があるのか」を候補者に伝えることが、これまで以上に求められます。
サラリーだけではなく、Employee Value Proposition(EVP:企業が社員に提供できる価値)を明確に伝えることが重要になってくるのです。

また、すでに積極的に転職活動をしているActive Candidateだけではなく、「今すぐ転職するつもりはないけれど、良い機会があれば考えたい」というPassive Candidateと長期的な関係を築くことも、採用戦略の一つになっていくでしょう。

社員の離職が減れば、企業にとっては一見良いニュースに見えます。採用や教育にかかるコストを抑えられ、経験のある社員を社内に残すことができるからです。
しかし、ここで注意したいのが、Retention(定着)=Engagement(エンゲージメント)ではないということです。
社員が会社に残っている理由が、「この会社で働き続けたい」ではなく、「今転職するのは不安だから」だった場合、Turnoverが低いからといって必ずしも社員満足度が高いとは言えません。
実際、Gartnerの2026年の調査では、一見すると矛盾するような興味深い結果も報告されています。

つまり、会社には残っている。でも、会社への気持ちまで強くなっているとは限らない。
だからこそ、現在の低い離職率を単純にRetentionがうまくいっていると捉えるのではなく、以下のような視点を持ち、「なぜ社員が自社に残っているのか」を理解することも重要と言えるでしょう。

では、こうした市場を求職者側から見るとどうでしょうか。
雇用市場が不透明で人材が動きにくくなっているからといって、キャリアそのものまで止める必要はありません。
今すぐ転職しなくても、こういった準備はできます。
人材が動きにくい時期だからこそ、自分の経験やスキルを見直し、次にどんなキャリアを目指したいのかを考えておく。
それが、人材市場が再び動き始めたとき、自分の選択肢を広げることにつながるのではないでしょうか。
