【2026年版】アメリカ労働制度アップデート
〜 知っておきたい3つの変化〜


「スターバックスの”名ばかりマネージャー”が集団訴訟を起こし、従業員側が勝訴。約160万ドルの和解金を支払うことに。」

これは2009年に起きた、労働区分の誤分類(Misclassification)を巡る象徴的な事例のひとつです。
当時は「大企業の過去の失敗例」として語られることも多かったこのケースですが、実は近年、同様の問題が再び注目を集めています。
米TIME誌によると、肩書きと実態が乖離したExempt区分の誤分類を含む残業代関連の違反について、労働当局による是正・摘発件数は過去10年で約485%増加しているという調査結果も。(*)

2026年を迎え、アメリカの労働制度は静かに、しかし確実に変わっています。

こうした労働区分をめぐる動きを含め、ひとつひとつの制度改定は一見すると小さな調整に見えるかもしれません。
しかし実務の現場では、企業にとっては雇用設計やコンプライアンスリスクに、働く個人にとっては給与・将来設計に直結する重要な変化となっています。

本記事では、2026年に押さえておきたい最新の人事・労働制度アップデートを、企業・候補者双方の実務に役立つ視点で整理していきます。

*参照:TIME | More and More Employers Are Using an Overtime Loophole to Pay People Less

1. Minimum Wage 2026:最低賃金

連邦

連邦最低賃金は、2009年以降 $7.25/時 のまま据え置きとなっています。

一方で実際の労働市場では、多くの州・自治体がこれを大きく上回る最低賃金を設定しています。これは以前「アメリカの最低賃金〜従うべき法律と給与設定のポイント〜」の記事でもご紹介した通りですね。

以下にて、2026年に施行される主な改訂例を整理してご紹介します。

           
州名 改定前改定後引き上げ率改定理由
カリフォルニア $16.00 $16.90 5.6% 物価連動
ワシントン $16.28 $17.13 5.2% 物価連動
アリゾナ $14.70 $15.15 3.1% 物価連動
コロラド $14.42 $15.16 5.1% 物価連動
オレゴン $15.95 $16.30 2.2% 物価連動
ニュージャージー $15.13 $15.92 5.2% 物価連動
フロリダ $14.00 $15.00 7.1% 段階的引き上げ
ニューヨーク $16.00 $17.00 6.7% 段階的引き上げ+インフレ調整
※ NYC・Long Island・Westchester など
一部地域が対象
ハワイ $14.00 $16.00 14.3% 段階的引き上げ
コネチカット $15.69 $16.94 8.0% 物価連動

都市

上記に加え、市・郡単位で州を上回る最低賃金が設定されているケースも少なくありません。
実務においては、該当の勤務地のルールをしっかりと確認することが必要不可欠です。

また、リモート勤務・複数拠点を持つ企業では「勤務地基準」での賃金設定が必須なので、そちらも気をつけたいポイントですね。

2. Exempt / Non-Exempt:実務上の影響が急速に拡大

Exempt(残業代免除)と Non-Exempt(残業代支給対象)の区分自体は、決して新しい制度ではありません。
しかし近年は、最低賃金の上昇や州独自ルールの厳格化により、実務上の影響が急速に拡大しています。

全体的な流れ

Exempt基準は“狭く・厳しく”なっている傾向が見られます。
全米共通の傾向として、次の点が挙げられます。

  • 最低賃金上昇により、Exempt最低年収ラインが実質的に引き上げられている
  • 州レベルでの労働者保護強化が進行
  • 「名ばかりマネージャー」「裁量のないホワイトカラー」に対する監査・訴訟リスクの増加

制度そのものは変わってはいないものの、「正しく理解していないとリスクが顕在化する」フェーズに入ったと言えるでしょう。

代表例:カリフォルニア州が示す“先行事例”

州ごとの差を理解する上で、最も象徴的な例が カリフォルニア州です。
同州は、Exempt基準が全米で最も厳しい州のひとつとして知られています。

カリフォルニア州では、Exemptと認められるために以下の条件が求められます。

Exemptと認められるための主な条件

最低年収ライン
州最低賃金 × 2倍 → 2026年には $70,304 に到達

職務内容
業務時間の 50%以上 が裁量性・判断を伴うExempt業務であること

ホワイトカラー=残業代対象外、という認識はもはや安全ではありません。また肩書きが Manager や Director であっても、実務作業が中心の場合は Non-Exemptと判断されるケースも十分にあり得ます。

CA州だけの話ではない

重要なのは、カリフォルニア州が「特殊な例外」なのではなく、労働保護強化の“先行事例”であるという点です。

実際に、ニューヨーク州、ワシントン州、コロラド州などでも、最低年収ラインの引き上げや職務定義の厳格化が進んでいます。

州をまたいで働く・転職する場合、同じ職種・肩書き・年収であっても、Exempt / Non-Exempt の扱いが変わることがあり得ます。2026年は、「自身が本当にExemptかどうか」を見直す良いタイミングかもしれませんね。

3. Retirement Contribution 2026:拠出限度額の引き上げ

SECURE 2.0 Act (退職貯蓄制度を拡充・強化する連邦法)に基づき、IRS は2026年のリタイアメント拠出限度額を引き上げています。
インフレ調整とはいえ、可処分所得や報酬設計に直接影響する重要なアップデートです。

       
プラン名 改定前改定後補足
401(k), 403(b), 457 $23,500 $24,500 従業員拠出上限
401(k) Catch-up $7,500 $8,000 50歳以上の従業員のみが利用できる特別枠
401(k) “Super” Catch-up $11,250 $11,250 60〜63歳の従業員のみが利用できる特別枠(据え置き)
IRA(Traditional / Roth) $7,000 $7,500 個人拠出上限
IRA Catch-up $1,000 $1,100 50歳以上のみが利用できる特別枠

キャリア視点では、給与額だけでなくオファー比較・転職判断の重要指標とも言えるでしょう。

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2026年は、急激な変化というよりも、「制度を知らないことがリスクになる年」と言えるかもしれません。気になる制度やオファー条件があれば、「これって普通?」「他社と比べてどう?」といった軽いご相談からでも、ぜひ気軽にお声がけください♪

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