「どういうこと?」「なぜ?」と思われる読者の方も多いかも知れませんね。
日頃から人事のエリアに身を置く我々としては、この調査結果にどこかとても共感を覚える部分があり、ぜひ記事としてご紹介したいと感じました。結果を読み解きながら、日本そして、そのカルチャーを受け継ぐ在米日系企業が直面していると言える問題を見ていきましょう。
冒頭の記載は、英系大手人材紹介会社ヘイズ社の調査結果に基づいたものです。
そもそも、”人材ミスマッチ”とはなんでしょうか?
英語では、”Talent Mismatch”と言い、企業が求めている人材の需要と、実際に人材市場に存在する供給の間のギャップを指します。以下のようなケースが挙げられます。
つまり、単純な需要と供給の量的な不釣り合いを指すだけではなく、「埋めるべきポジションを埋められない」という幅広い状態を含むということとなります。
以下は、ヘイズ社が先進国30カ国以上を対象に、2012年から継続的に実施している調査のうち、「人材ミスマッチ度」に焦点を当てた結果です。
ご覧いただき分かるように、日本のミスマッチ度は10段階中10。アメリカに並んで、世界で最も深刻な状況いう結果が出ています。
ここで、ひとつおさらいをしましょう。
米国を始めとした欧米諸国の人材の流動性の高さは [転職大国アメリカ] でご紹介した通り。優秀な人材が次々と転職を繰り返す訳ですから、企業が常に人探しに追われるのは必然な流れですね。
では、日本の高いミスマッチ度の背景には何があるのでしょうか?
理由は多岐に渡るでしょう。例えば、少子高齢化・女性の社会進出問題など、根深くマクロな、企業単位では変えようのない要因もあるのは確かです。
一方で、人事に対する考え方次第で改善できる点も存在するよう強く感じます。
例えば弊社のお客様で「なかなか採用に至らない」「ずっとポジションが空席のまま」という問題を抱えるケースは、以下のような理由であることが大半を占めます。
上記のようなケースを意識改革で変えられると考える理由を述べる前に、ひとつご紹介をさせてください。
「CHRO」「HRBP」といった言葉を聞いたことはありますでしょうか?日本ではまだまだ浸透しておらず、耳にしたことがない方も多いかも知れませんね。
これらはアメリカ発祥の人事の専門職です。
ここで言いたいのは、「これらのポジションを導入しましょう」ということでは決してなく、「人事の重要性を気づき、マインドセットは変えてみてはいかがでしょうか」ということです。
国 | 「人材」の定義 | 補足 |
---|---|---|
アメリカ | ヒトこそが企業の事業成長の鍵であり、「経営」視点から人的資本の課題を捉えるべき。 | この考え方は近年更に加速を見せている。その一例とし、2020年11月にSEC(米国証券取引委員会)は、米国上場企業に対し人的資本の情報開示を義務化する規則を制定。企業価値を判断する上で人材に関する情報は必須事項だ、という投資家からの声に応える形で実現。 |
日本 | 頭数を揃える労働力であり、コストセンター(企業において直接的に利益を生み出さない要素)。採用は「現場」や「オペレーション」の延長であり、経営に直結するものではない。 | この考え方は、日本の高度成長期を支えたメンバーシップ型雇用の名残。戦後の労働力不足の日本における大量採用・長期雇用の制度は、特に製造業には合理的なものであり、日本を世界一のものづくりの国に導いた。 |
もちろんどちらが正解、ということはなく、それぞれの良さがあるはずです。
ただ、時代は変わり、多様性や柔軟性が求められる時代になったことは事実です。日本でも近年「戦略人事」「攻めの人事」の重要性が問われ、ユニリーバ・ジャパンやサイバーエージェントなどの大手企業を中心に、CHR/HRBPなどの導入例が見られ始めました。
人事=経営に直結するファクターだとい感覚を持ち、今後以下のような考え方を持った日本企業が増えていけば、日本は深刻な人材ミスマッチから抜け出すスタートラインに立てるのではないでしょうか。