パンデミックを機に激動の時代を過ごした人類。ご多聞に漏れず、HR業界にとっても波乱の三年間でした。
2021年には“Great Resignation(大辞職時代 )”という造語が出現し、波乱の離職劇を生き延びるべく人事の皆様は対応に明け暮れたことかと思います。
それから一年半の時が過ぎた現在。
昨今の企業努力の矢印は「人材獲得(Talent Acquisition | タレント・アクイジション)」から「人材定着(Employee Retention | エンプロイー・リテンション)」へ変わったと言われています。
今回の記事では、人材定着について詳しく解説していきます。
以下は、従業員管理プラットフォームを運営するLattice社による調査結果です。
HR分野において過去一年で人材獲得の優先度が著しく下がり、確実な意識の変化があったことが見てとれますね。獲得競争に成功したとしても、そのタレントがすぐに他社へ流れてしまったら元も子もありません。優秀なタレントをいかに維持するか、がこれからのキーと言えそうです。
米国では、以下を指標として企業の人員の入れ替わりを測ることが一般的です。
一般論として、人材定着率 90%以上・離職率 10%以下であることが好ましいとされています。
皆様の会社はいかがでしょうか?一度ぜひ計算してみてください。
求人プラットフォームを運営するiHireが、こんな興味深い調査結果を発表しています。
雇用主が聞いている退職理由と、実際の従業員の心の内は、どうやら必ずしも一致していないようですね。
社員から聞く話だけを鵜呑みにしていては、人材の定着率を維持・向上は難しいのかもしれません。
本当に効果的な策は何なのでしょうか。考えられるものをいくつかご紹介しましょう。
”オンボーディング”とは、船や飛行機への搭乗を意味する”On-board”から派生した言葉で、新入社員の入社手続きから一人立ちまでの一連のプロセスを指します。
「なぜ従業員の定着に、入社手続きが関係するの?」と疑問に思われる方もいるかもしれませんね。
以下のような面白いデータが存在しますのでご紹介しましょう。
参照:SHRM
「第一印象が重要」というルールは人事・組織管理にも当てはまる、普遍の鉄則と言って良さそうです。
オンボーディングに関連する詳しい解説は、またの機会にご紹介させていただきます。
とても現実的なテーマではありますが、やはりお金は一番のモチベーターであると断言できそうです。
少し前までトピックとなっていた「フレキシビリティー」や「ベネフィットの充実」は意外にも順位が高くなく驚きました。おそらくこれらは既に”あって当たり前”なものとして認識されており、昨今は”目に見えわかりやすい報酬”を求める動きがあるのかもしれません。
”従業員エンゲージメント”とは、従業員が企業の方向性に共感し、自発的に貢献したいと思う意欲のことを指します。会社への「愛着」「信頼」「帰属意識」だとイメージいただくといいかと思います。
従業員エンゲージメントを上げる方法は百人百様ではありますが、一般的には以下のような施作が推奨されています。
ボトムアップ、かつ双方向な意思決定 | 何事も、土台が命。従業員サーベイを実施するなど、社員が自分の声を発する機会を持つことは、”尊重されている”という意識に繋がるはずです。また、秘密主義的かつ一方通行な経営は疎外感を生む原因ともなります。透明性を持ち、インタラクティブな環境を意識してみては。 |
業績を認識し、評価する | 従業員評価プラットフォームを導入するなど、社員の功績を讃える体制を整えてみるのも効果的かもしれません。いきなり大がかりな事は難しい、という場合は「お疲れ様」「ありがとう」など小さな称賛の声掛けからはじめてみてはいかがでしょうか。自分の頑張りが認められているという喜び、ひいては仕事そのものへのやりがいや充実感など大きなインパクトをもたらすはずです。 |
個人の成長に投資し、サクセスロードマップを共に描く | 従業員はロボットではなく、一人の人間。当たり前のことですが、日々の仕事の中で忘れがちなことかもしれませんね。社員一人一人が、一個人として成長できる場や機会を用意し、長い目で見たキャリアアップを応援することは、会社への忠誠心に結びつくのではないでしょうか。 |