「Could you provide us with three references of yours?」
「あなたの身元照会がとれる過去の勤務先の方の情報を3名分提出してください。」
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日本ではあまり馴染みのない制度ですよね。
人種のるつぼアメリカ。多種多様なバックグラウンドを持つ人々が暮らす多民族国家であるが故に、負の側面もゼロではありません。例えば、お金と引き換えに学位や職歴を売るビジネスも蔓延っているというから驚きです。
信用評価が文化として根付いているのも納得ですね。リファレンスチェックだけでなく、バックグラウンドチェック、リファラル採用、大学入試の際の推薦状や、支払履歴をスコア化したクレジットヒストリーも同じ概念に基づいていると言えそうです。
今回は、採用時のリファレンスチェックについて解説していきたいと思います。
大手調査会社 First Advatnage社が2019年に発表した以下の経歴詐称率のレポートをご覧ください。これは、同社が各国の採用候補者を対象に実施した調査のうち、経歴詐称が発見された割合をマップ上に示しています。
引用:JAPAN PI
調査対象17カ国のうち、アメリカはトップの19.22%、つまり約5人に一人が偽った経歴を履歴書に書いていたという結果が出ています。一方で、日本は17カ国中13位、経歴詐称は相対的に少ないと言えそうです。
実際に就学せずともお金を払えば学位を授与する非認定大学 ディプロマ・ミル(別名:デグリー・ミル ※millは工場を指す英単語 つまり、ニセ学位製造所)が世界には数多く存在します。その温床となっているのがアメリカ。
このような背景から、19世紀後半以降学位商法が普及したと言われています。
伝えられた情報を鵜呑みにすることはアメリカでは危険と言える為、リスクヘッジとしてリファレンスチェックなどの信用評価制度が存在すること、お分かりいただけましたでしょうか?
アメリカの信用評価の文化についてご理解いただいたところで、次にリファレンスチェックにフォーカスを置いてお話していきます。
候補者のキャリアの保証人となるのがリファレンスの方々です。
以下のような相手を対象に、1~3人の情報提出を求めることが一般的です。
候補者目線で見れば、「あなたを高く評価し、雇用者を安心させる内容を伝えてくれる人」を選定したいと考えるのが自然ですね。ただし、家族や友人などプライベートの繋がりからの人選、架空のリファレンスの捏造は避けるべきでしょう。
リファレンスチェックでは、「雇用履歴の照合」「仕事ぶり」「チーム内での立ち振る舞い」の3つの軸で質問をすることが多いです。以下にていくつか例をご紹介します。
これまでも口を酸っぱくしてお伝えしてきた通り、アメリカは訴訟大国。
リファレンスチェックにも、訴訟に繋がりうるポイントが山のように存在するのは想像に難くないでしょう。
「リファレンスチェックは、いつ実施されるのですか?」という質問をよく頂きます。
実は明確な法的規定は存在せず、雇用主はいかなる段階でもリファレンスをとることができます。
しかし、候補者のプライバシーの保護などの法的・倫理的観点から、オファー受諾後、かつ候補者の同意を得て初めて実施することが最善だと考えられています。
また少し話は脱線しますが、候補者が選定した人物以外にリファレンスをとることをBackdoor Reference(バックドア・リファレンス ※bacdoorは、正規の経路や手段ではない「裏口」を指す英単語)と言います。ポジティブなコメントをすることがほぼほぼ約束されている従来のリファレンスと比較し、より有効である方法として近年注目を集めています。
Backdoor Referenceは法的に実施可能ですが、「過去のネットワークや勤務先から無作為に人選し、コンタクトをしていいか」の承諾を得た上で実施がマストと言えます。
特定のポジションや人物だけに実施することも、差別行為と捉えられる可能性が高いです。実施を希望の場合は、候補者全員に公平に行いましょう。
また言うまでもなく、性別・宗教・年齢・人種・家族形態・身体状態など、業務に直接的に関係ない質問は避けるべきです。
これはリファレンスチェックの内容に基づき、オファーを取り消したい時も同様。上記のような理由に基づく場合は差別となり、正当かつ誰が見ても納得のいく理由に基づく場合にのみ内定を取り消すことができます。