
「今回の転職では年収をアップさせたいです!」
仕事を変えるからには、納得のいく額面でジョブオファーを受け取りたいと思うのは当然ですよね。
しかし一方で、「給与は上がったのに、生活は楽にならない・・・」
そんなことが起こり得るのが、ここアメリカです。
住む場所や条件の影響が大きい米国では、年収の“高さ”だけではなく、実際にいくら手元に残り、どんな生活ができるのかという視点が欠かせません。
特に州ごとの税制差や生活コスト格差が拡大する昨今、これからの転職ではこの視点がますます重要になってきます。Elon Musk 氏が、2020年に州所得税のないテキサスへ移住・経営拠点を移したのも有名な話。
本記事では、在米で働く方が転職やキャリア判断をする際に知っておきたい「手取りと可処分所得を軸にした転職・キャリアの考え方」を解説します。

まず整理したいのが以下3つの言葉。
アメリカでは、給与から以下のような項目が差し引かれます。
年収と実際の手取りが異なるのは、日本もアメリカも同じです。ただしアメリカの場合、
という違いがあります。つまり、オファー額(Gross Pay)が同じでも、州・保険プラン・拠出設定によって手取り(Net Pay)は大きく変わるのがアメリカの特徴です。日本よりも「自己設計型」の要素が強いため、アメリカでは「年収いくらか」よりも「手取りはいくらか」を見ることがより重要と言えるでしょう。

前提条件を以下の通りで、比べてみたいと思います。
年収(Gross):$100,000
家族構成:単身
医療保険・401(k) 拠出:ここでは未考慮(純粋な税金のみ)
| 州名 | 州所得税 | 州所得税率 | 推定手取り |
|---|---|---|---|
| カリフォルニア | あり | 約6〜7%(累進課税・最大12.3%) | $67,000〜$72,000 |
| ニューヨーク | あり | 約6〜7%(累進課税・最大10.9%) | $66,000〜$71,000 | ニュージャージー | あり | 約6〜7%(累進課税・最大10.75%) | $68,000〜$72,000 | ハワイ | あり | 約6〜7%(累進課税・最大11%) | $66,000〜$70,000 |
| イリノイ | あり | 4.95%(固定) | $70,000〜$74,000 |
| テキサス | なし | ー | $73,000〜$78,000 |
| フロリダ | なし | ー | $73,000〜$78,000 | ワシントン | なし | ー | $73,000〜$78,000 |
同じ年収でも、州によって年間で$5,000〜10,000以上の差が出るとは驚きですね。

では実際に、生活に自由に使えるお金はどれくらい残るのかを見てみましょう。
本ケースでは、州・地域差が大きいアメリカの二大固定費「住居費(家賃)」「教育費(Preschool)」を含み、比較してみたいと思います。
年収(Gross):$100,000(片働き想定)
家族構成:夫婦+子供1人(5歳以下・就学前/私立プリスクール通学)
住居:1BRアパート
医療保険:標準的なプランに加入($600/月と想定)
| 州名 | 推定手取り | 家賃(年) | 保育費(年) | 推定可処分所得 |
|---|---|---|---|---|
| カリフォルニア | $70,000 | $30,000 | $20,000 | $1,170/月 |
| ニューヨーク | $69,000 | $32,000 | $22,000 | $710/月 | ニュージャージー | $70,000 | $28,000 | $18,000 | $1,500/月 | ハワイ | $68,000 | $31,000 | $20,000 | $875/月 |
| イリノイ | $72,000 | $24,000 | $15,000 | $2,250/月 |
| テキサス | $76,000 | $22,000 | $14,000 | $2,830/月 |
| フロリダ | $75,000 | $23,000 | $14,000 | $2,670/月 | ワシントン | $76,000 | $25,000 | $16,000 | $2,420/月 |
同じ年収でも、生活コストの違いにより、毎月使えるお金に $700〜$2,800 以上の差があります。
あくまで上記は、食費や交通費、通信費などを含まないうえ、世帯収入や家賃もミニマムな前提での試算です。それでも州によっては、ほとんど手元に残らないケースがあるのが現状です。

では、こうした前提を踏まえた上で、転職やキャリア選択では何を意識すべきなのでしょうか。
「年収を上げる」ことだけを目的にするのではなく、手取り・可処分所得ベースで“条件全体”を見ることが大切です。以下はすべて、実質的な手取りと生活安定度に直結する要素です。
同じ年収オファーでも、福利厚生や勤務地条件次第で「実際の豊かさ」には大きな差が生まれます。「いくらもらうか」ではなく「どういう条件で働くか」まで含めて設計することが、アメリカでの賢いキャリア戦略と言えるでしょう。
正直なところ、日系企業のオファーは、外資・米系企業と比べると年収額は見劣りするケースも少なくありません。しかし、手取り・可処分所得の観点で見ると、実はトータルでは悪くない、むしろ安定感が高いケースも多く見られます。
日系企業の特徴としてよく挙げられるのが、福利厚生の手厚さです。例えば、
これらはすべて、実質的な支出を下げ、可処分所得を守る要素です。
日系企業は、「短期間で最大化する収入」よりも、長く安心して働きながら生活を安定させる設計という特徴があります。
アメリカでの転職では、「いくらもらうか」より「いくら残るか」。
数字の見え方に惑わされず、手取りと可処分所得ベースでキャリアを設計することが、これからの賢い選択と言えるでしょう。
