
「またレイオフのニュースだ・・・」
2025年後半から2026年にかけて、テック企業や一部大手企業の人員削減が相次いで報じられています。
そのため、「労働市場は悪化しているのでは?」と感じる方も多いでしょう。
しかし、2026年2月に発表された1月の雇用統計では、非農業部門雇用者数は約13万人増加しました。
レイオフが目立つ一方で、雇用は増えている。
この“ギャップ”をどう理解すればよいのでしょうか。
今回は、最新データをもとに整理してみます。

2026年2月第1金曜日に発表された1月の米国雇用統計は次のような結果です。
これは「雇用が底堅い」と評価できる数値です。
しかし実は、過去数年と比較すると、そのペースは明らかに減速しています。
| 年 | 月平均雇用増加数 | 状況 |
|---|---|---|
| 2022年 | 約40万人 | パンデミック急回復期 |
| 2023年 | 約25万人 | 減速 | 2024年 | 約18万人 | 正常化 | 2025年 | 約15万人 | さらに減速 | 2026年1月 | 約13万人 | 低位安定 |
2022年のパンデミック回復期と比べると、勢いは半分以下。2023年以降徐々にペースが落ち、現在は13万人前後に落ち着いています。
つまり、マイナスには転じていない。しかし、拡大期でもない。
これが、2026年の労働市場の立ち位置です。
さらに重要なのが、今回同時に発表された過去の修正分です。
雇用統計は速報値で発表され、後日修正が入るのは通常のことですが、今回は下方修正されている点も見逃せません。
つまり、「思っていたよりも、実は雇用の伸びは控えめだった」ということ。
この流れがはっきり見えてきましたね。

雇用者数だけでは、市場の温度は測れません。
いくつかの補助指標も見てみましょう。
企業の採用意欲を示す求人件数はどうでしょうか。
BLS(米国労働統計局)によると、以下の通り推移しています。
| 年 | 月平均求人件数 | 市場の特徴 |
|---|---|---|
| 2022年 | 約1,200万件 | 歴史的高水準・超売り手市場 |
| 2023年 | 約950万件 | 高水準だが減速開始 | 2024年 | 約760万件 | 明確な減速局面 | 2025年 | 約700万件 | ピーク比約40%減 | 2026年1月 | 約650万件 | 低位安定・厳選採用 |
「とにかく人を採る市場」から「本当に必要な人だけを採る市場」にシフトしていることを示しています。
雇用の“温度”を測るもう一つの指標が、転職プレミアムです。
これは、“転職した人の賃金上昇率と、同じ会社にとどまった人の賃金上昇率の差”を示すもの。
例えば、
この数字が高いほど、「転職すれば大きく年収が上がりやすい市場」であることを意味します。
| 年 | 転職プレミアム | 市場の特徴 |
|---|---|---|
| 2022年 | 約15% | 歴史的高水準 |
| 2023年 | 約10~12% | 高水準だが減速開始 | 2024年 | 約8~9% | 明確な鈍化 | 2025年 | 約6~8% | 平常水準へ回帰 | 2026年1月 | 約6% | 落ち着いた市場 |
かつては、企業同士が人材を奪い合い「転職すれば一気に年収アップ」という状況が広がっていました。現在は、その勢いは沈静化しています。
企業の採用姿勢が慎重になっていることが伺えますね。
さらに注目したいのが、景気要因によるパートタイム就労者の増加です。
これは、次のような層を指します。
BLS(米国労働統計局)が分類する“Part time for economic reasons(景気要因によるパートタイム就労者)”の人数推移は以下の通りです。
| 年 | 人数 | 市場の特徴 |
|---|---|---|
| 2022年 | 約360万人 | 低水準 |
| 2023年 | 約400万人 | やや増加 | 2024年 | 約430万人 | 明確に増加傾向 | 2025年 | 約450万人 | 緩やかに上昇 | 2026年1月 | 約470万人 | 高まり傾向 |
失業率は低いものの、「完全なフルタイム雇用が十分に増えているわけではない」という側面も見えてきます。

この環境下でレイオフのニュースが目立つのは、不思議ではありません。
特にテック業界や一部大企業では、コロナ後の過剰採用の調整・金利上昇による投資抑制などを背景に、人員削減が続いています。
しかし重要なのは、レイオフ=労働市場全体の崩壊ではないという点です。
人員削減が目立つのは主にテックや一部の大企業。 一方で、
では雇用は堅調に推移しています。
現在は、“労働市場の総崩れ”ではなく、“業界間の再配分”が進む局面と言えるでしょう。
「どこでもチャンスがある」市場ではない
しかし「動けない」市場でもない
この環境下で重要なのは、業界選択・スキルの明確化・タイミングの見極めと言えそうです。
今は“量より精度”が求められる市場”。
レイオフの見出しだけで市場を判断するのではなく、数字と構造を理解することが大切です。
